フジパレスシニアコラムページ - 第21話

第21話「あたりまえではない『自分』へのもどかしさ」


今回は、私たちの仲間であるシニアハウスサポーターAの実体験に基づく本当に切実な想いを、コラムでお伝えします。

(以下Aの手記から抜粋)

私は、つい先月、約3週間、療養のため入院いたしました。これまで骨も折ったことがなく、病院とは全く無縁の生活をしておりましたので、当初は非常に不安が大きかったです。おかげさまで、今は元気に復帰できましたので、ひと安心ですが、入院中は、病院生活の中で私自身たくさん学ぶことがありました。

術後の数日は自分ひとりでは何も出来ず、看護師さんに身の回りのお世話をしていただきました。身体を拭いてもらったり、お水を飲ませてもらったり、トイレに連れて行ってもらったりと何から何まで手をお借りし、ナースコールを押す度に本当に申し訳なく、情けない気持ちにもなりました。私は4人の相部屋でしたので、カーテン一枚で仕切られた空間の中で、24時間生活し、隣の方の生活ぶりだけでなく、吐息も伺え、声や会話ももちろん筒抜けでした。病院にいるという安心感はありますが、数週間で退院できる自分と比べ、この生活が毎日続き、さらには、病院が「住まい」になってしまう方もいるのだと想像してみると、病院の中というのは、家族や周りは安心かも知れないが、当の本人は正直つらいなぁと思いました。

特別養護老人ホームの相部屋での生活もこんな感じなのかなあと、自分を特養や介護施設の入居者様に置きかえて考えてみると、とても今の自分では耐え切れるはずもないと考え、サービス付き高齢者向け住宅の存在はやはり重要だと痛感しました。プライベートな空間の有無で、毎日の生活は大きく変わります。また、何らかの援助や介護が必要なとき、気心の知れたスタッフさんに安心してサポートを依頼できる体制。不安なことや心配なことをいつでも相談できる環境。プライベートな住まいの中に、「安心」があることが、とても貴重なことだと感じました。また、同じような境遇の方が近くにいることが、心の拠り所になり、安心に繋がることにも気づきました。まさに共同住宅の利点であるなぁと感じました。

今回、病気を期に入院生活を実体験し、私自身これまで気づかなかったたくさんの気づき、学びがあり、日々の何気ない毎日や五体満足で動いてくれている自分自身の体への感謝の気持ちや、私は自分ひとりではなく、周囲の多くの方に支えられて生きているということに本当の意味で気づいた気がします。不謹慎かもしれませんが、入院してみて本当に良い経験ができたと感じております。この気づき、学びを忘れず、今後の業務に必ず活かして参ります。(以上)


普段は明るく朗らかなAであっても、こんな気持ちになるのか~と考えさせられました。かく言う私も十数年前、生まれて初めて約3ヶ月間、入院生活を送りました。Aと同じく病気やケガとは無縁の元気生活でしたので、入院すること自体に大きなショックを受けました。さらに最初の1ヶ月は自力でトイレにいくことができず、やむを得ずベッド上で用を足し、お風呂にも入れませんので、2~3日に1度体を拭いてもらい、洗髪できたのは、入院2ヶ月目に入ってからだったことを思い出しました。

これまで何不自由なく『あたりまえ』に自分で出来たことが、ことごとく出来ず、無力感を感じ、自分の存在意義すら薄れてきて、声のトーンが下がったり、逆に聞き耳を立てたりと、それまでの自分とは違う自分であることに気づきながらも、時間が経ち回復を待つ以外にどうすることもできませんでした。

人として、自分の意思で、自分がやりたいことができるということほど、幸せなことはありません。若い時は、その可能性も無限大と言っていいくらいですが、老いるにつれ、色んな制限・ハードルが立ち塞がります。ただ、人は誰もが老いていく中で、あたりまえではない『自分』を受け入れていくしかありません。それでも、わかっていても、なかなか受け入れできないのが現実だと思います。

フジパレスシニアには、大なり小なり、それぞれが抱えたハンデを背負って入居されます。若い時と同じく、何不自由ないという方は皆無に等しい状況です。言い換えると、あたりまえの『自分』とのギャップを埋めるために、それを期待して、フジパレスシニアを選んでいただいていると言えます。


シェイクスピアの『マクベス』に、こんな言葉があります。

『明けない夜はない』

どんな暗い夜も朝になれば明けるように、今は不幸な時期であっても、やがて必ず良い時期が来るということ。今はあたりまえでない『自分』であっても、きっとフジパレスシニアにご入居いただければ、あたりまえの『自分』を取り戻していただくことができると確信を持っています。

Aが経験したこの出来事・想いを、フジパレスシニアの運営に関わる全てのスタッフが共有することで、更なるサービス提供レベルの向上に繋げて参ります。