フジパレスシニアコラムページ - 第18話

第18話「お金ではない、判断基準」


昨年末、私の携帯電話に、Sケアマネージャー様より「ご入居先を探されているご家族様がいらっしゃる」とご連絡を頂きましたので、「是非一度、当社のフジパレスシニアを実際に見て頂き、現状の問題・課題の解決方法を一緒に考えさせて頂きたい」旨をお伝え致しました。

ご家族様のお話では、その週には当社フジパレスシニアを2件と当社以外の有料老人ホームを1件見学される予定でした。その有料老人ホームは市内で最も価格が安く、当社フジパレスシニアも決して高い価格帯ではありませんが、合計費用では、月額4万円程の費用の差がありました。

色々と比較された場合、どうしても、まずは価格が安いところに惹かれるとは思いますが、私は、一番重要なことは、ご家族様やご本人様の現在のお困り事を、いかにスッキリ解決できるかどうかだと、冷静に考えておりました。

全ての見学を終えられた後、ご家族様の想いや考え、ご本人様の課題をお伺いした際、案の定、まず最初に言われたことは、やはり判断基準の優先順位としては、「①価格、②入居者様への対応力」との事。「本人の年金は数万円。残りは全て私達兄弟で支援するが、やはりその負担は大きい」ということが理由でした。

しかし、フジパレスシニアの「自分の親を安心して預けられる住まい」というコンセプトやフジ住宅の経営理念の話、 スタッフの対応や振る舞い、ご入居済みの皆様のイキイキとされたご様子の館内掲示写真を見られるうちに、心が緩まれたのか、現在お母様がご入居中の某施設での、認知症のあるお母様に対するスタッフの対応について、悲しい想いを話して下さいました。

お話の間は、こちらから言葉を挟むことなく、すべての悲しい想いを受け止めさせていただき、最後にひとことだけ、現場のケアスタッフの想いをお伝えしたところで、一旦しっかり考えられるとのことでその日はお帰りになられました。


それから数日後、ご家族様よりお電話を頂き、「本人の状況をしっかりと聞いてくれ、どの様に対応すれば良いか一生懸命考えてくれましたので、ぜひフジパレスシニアにお願いします」と言って下さいました。また、あらためて現在お母様が置かれている状況、ご家族様が心を痛めておられる状況について、涙ながらに話してくださいました。

現在、お母様は、大量の睡眠薬の服用を余儀なくされ、意識もはっきりとせず、混濁し、会話もままならないばかりか、ご自身のご意思で自由にお部屋から出られないようにされている。その原因は施設内で流行している「疥癬」という伝染病に感染してしまったこと。お母様は認知症もあり、部屋から出歩いて他の人に感染を拡げてしまっては困ると迷惑がられている。

施設スタッフも、認知症で徘徊するお母様が原因で、他の人にも感染させてしまったと、何の根拠もなく誤解され、振る舞いもよそよそしく、その様子を見ているだけも非常に辛いとのこと。


この話を聞き、フジパレスシニアのケアスタッフはすぐに緊急ミーティングを開きました。介護・医療の全スタッフが協力して疥癬の感染を防ぎながら、ご本人様に尊厳ある生活をして頂くにはどうしたら良いかという大変前向きな話し合いでした。

幸いなことにお母様の疥癬は感染力があまり強くないタイプであり、ほぼ治りかけていること。医療的な対策がしっかりとできることも確認でき、きちんとした病気の知識を持って、感染予防の事前準備を万全に整えることで感染は防げるし、受入は可能との結論が出ました。

スタッフ全員が感染予防の手順を完璧にマスターし、洗濯物の隔離、入浴時の対応など、体力的にも精神的にも、現状より相当な負担が増える内容でしたが、リスクをなくし、入居して頂く為に、スタッフ全員が一致結束して決めたことでした。

受入準備が進められる中、ご家族様からの緊急連絡で、「急遽、今月末で出て行って欲しいと言われた」と悲痛な声でご相談がありましたが、ほぼ受入準備も整っておりましたので、当初予定よりも早く、無事フジパレスシニアへのご入居となりました。

ご入居の際、連携医療機関の医師の診察の様子、看護師・スタッフのお母様への対応・声掛けの様子を見ておられたご家族様が涙を流されながら、「フジ住宅さんの高齢者住宅に引っ越して本当に良かったです。」と言って下さいました。この言葉に、現場管理責任者をはじめスタッフ全員の胸が熱くなり、自分たちの仕事に対する誇り、モチベーションが、ものすごく上がったことは、言うまでもありません。


幸いにも、お母様の感染症はほぼ完治されており、後は経過観察期間の1週間だけ、お部屋の中での少し不自由な生活となりましたが、すぐに普段の生活に戻られました。

ただ、まだまだ、お母様には、昼夜逆転や徘徊など、落ち着いた生活の実現には解決しなければならないことはありますが、スタッフ全員が日々の生活の中で寄り添いながら、認知症周辺症状の原因となる想いを見つけ出し、その原因を取り除いていけば、笑顔で過ごされる日は近いと確信いたします。お母様の受入れに対し、形に見えない部分でも懸命な努力をされたスタッフがいてくれたからこそ、ご家族様の心も動いたのだと思います。

私もこの出来事に関われたことに、大変うれしい気持ちになり、「もっともっと、沢山の方に、フジパレスシニアにご入居頂き、喜んで頂きたい!」と、あらためて、心に強く誓いました。