フジパレスシニアコラムページ - 第一話

第1話「実は私の父だったんです」


そろそろ季節は春に移ろうとしているものの、まだまだ底冷えのする2月、私の携帯が鳴った。 着信はNケアマネ-ジャ-からだった。

「今、私の利用者で、退院後の入居先を探しているんですが、どこか良いところは無いですか?」

普段から私は、一人でも多くの方の役に立ちたい、喜んでもらいたいという一心で、近隣のケアマネ-ジャ-様に、フジパレスシニアを知っていただく活動をしている。ありがたいことに、これまでにたくさんのケアマネ-ジャ-様とお会いできた。電話をくれたNケアマネ-ジャ-もその一人。私に高齢者住宅探しを相談してくれたのだ。


「分かりました!」と大きな声で返事をし、利用者様の身体状況やご家族のご要望等をお伺いし、フジパレスシニアの中で一番、利用者様のご要望を満たすと思われる住宅を案内させていただいた。 ありがたいことに、そのフジパレスシニアにご入居を決めて頂いた。

Nケアマネージャー様にも本当に感謝していただき、ひと段落という時、私は想像もしていなかった事をNケアマネージャーから伺った。「実は私の父だったんです。この前お世話になった・・・・」 「えっ?Nさんのお父さんだったんですか?」

Nケアマネージャーからは自分のご担当の方としか聞かされでていなかったが、ご入居いただいたのは、実はNケアマネージャーのお父様だった。ご自分の父親の退院後の入居先を決めるのに私に相談していただけたのだった。


「私の利用者さんも、これまでフジ住宅さんの高齢者住宅で、何人もお世話になっているし、ご本人はもちろんご家族様も、皆さんそれぞれ喜んでおられるし、何よりも、フジ住宅さんの高齢者住宅は『自分の親を安心して預けられる住まい』というコンセプトをしっかり実践されているので、どこか良い所を紹介してくれるんじゃないかな~と思ったんですよ。」

最近は介護も医療も様々なサービスが発達してきて、在宅での介護も昔に比べて、だいぶ楽になってきたと言われているが、実際には、ご家族が自宅でずっと介護をされることが、簡単ではない事も、また事実だと言う事を私は十分認識している。

入居者様の本音を言えば、ずっと住みなれた家で過ごしていたほうが楽なのかもしれない。でも私はケアマネージャーさんや病院の相談員さんとお話しする時は、これまでの家で過ごしているのと変わらない、ゆったりした気持ちで過ごせる高齢者住宅を提供していると、ずっと説明してきたし、その自信もあった。

「父がお世話になって本当に助かっています。スタッフの方もすごく親切で丁寧に対応していただけるので、安心しています。」


Nケアマネージャーの言葉に、私は何とも言えない充実感に満ちた、朗らかな気持ちなった。 月並みな言い方かもしれないが、私達の提供している高齢者住宅が、世の中の役に立っているんだという実感を心から感じた。

100人いれば100人の人生が有る。

人それぞれの時間も満足度も全て違う。

不安や悩みをお持ちの高齢者の方やそのご家族様がおられた時に、声をかけていただける、この人に聞けば何か相談に乗ってくれるんじゃないかと思ってもらえる、それだけで、私はこの仕事ができて、幸せだと思うし、誇りに思う。

季節は3月に移り、少しずつ暖かくなってきた。街や公園にも緑が増え、春を感じられるようになってきた。